奈良県の中央に位置し、春は千本桜、夏は清流、冬は温泉と四季折々の自然が有名な吉野。美味しい野菜もたくさん採れるとあり、豊かな環境を求めて移り住む人も少なくありません。外からきた人たちを町の人は温かく迎え入れ、住民同志の交流も盛んに行われています。
2019年2月16日、そんな吉野の町で公務員と地域の方々が集まるという、一風変わったイベントが開催されました。
公務員向けの仕事術に関するイベントの後、夜は東京・高円寺で大人気の「旅人Bar」が出張しての交流会。吉野でとれた美味しい野菜やジビエ料理もふるまわれるということで、潜入取材を行いました!
共通点は「吉野町を愛する気持ち」。会場には多種多様な人が集まりました!
このイベントは「吉野町自主研究グループ」と「奈良県庁自主勉強会(登大路カフェ)」が合同で企画したもの。「これから求められる公務員の仕事術~地域における公務員の活かし方~」と題し、県や町、公務員や地域住民という垣根を超えて、地域をどう発展させていくことができるかを考えます。
「公務員として、もっと活き活き働きたい!」「積極的に地域の役に立ちたい!」
という熱意を持った公務員の方はもちろんのこと、「公務員さんがどんな仕事をしてるのか知りたい」「一町民として一緒に地域を盛り上げたい!」
と考える地域住人の方、そして吉野町以外から来た旅人が一堂に会しました。
吉野町の住民も参加。役所で働く公務員の方々と一緒に町づくりを
イベントのトップバッターは山形市役所職員の後藤好邦さん。
後藤さんは山形市役所で様々な役目をこなしながら、「東北まちづくりオフサイトミーティング」を発足。公務員としての在り方を考え、発信しておられます。
講演は、ミニゲームからスタートし、会場の雰囲気が一気に和やかになりました。こういった気配りからも、後藤さんの想いや人柄を伺い知ることができます。
お話の中で印象的だったのが「1人の100歩ではなく、100人の1歩」という言葉。みんなで協力していくことの重要さを改めて考えさせられました。
その後、奈良県庁職員の甲賀晶子さん、吉野町役場職員の八釣直己さんがパネラーを務められ、パネルディスカッションが行われました。
参加者の皆さんも積極的。見てください、みなさんのこの生き生きとした表情!
イベントには、吉野に住む子どもたちもちらほらと。
元気な子ども達に向けられる視線が温かく、吉野町の雰囲気が垣間見られました。
住む場所や役割を超え、全員が一歩踏み出すことの大切を、改めて感じます。
吉野町職員の資質向上を目的とし、勉強会等を開催。公務員同志や民間事業者、町民の方とのつながりを広げているグループ
職員の交流と視野を広げることを目的に、有志の職員で形成・運営されている会。過去にはワールドカフェ形式やフィールドワークなど、様々な形態で25回ほど勉強会を開催しており、参加人数は延べ760名を超える。
新鮮な吉野野菜を収穫!「旅人料理人」の腕がなります
イベントの後は皆で交流会。その交流会でふるまう料理を作るのは、「旅人料理人」の佐貫聡さんと仲村ゆうなさんです。
△佐貫聡さん
△仲村ゆうなさん
お昼頃に吉野入りし、その足で畑へ。今回のお料理は、なんと「畑の収穫」から始まります! 地域おこし協力隊の中村佳愛さんにご案内いただき、農家さんの元へ向かいました。
優しい笑顔で迎えてくださった竹本さん。
竹本さんのお野菜は、JAやコープだけでなく、地元の学校給食にも使われているのだとか。
まずはカゴいっぱいの食材を確認。旅人料理人が野菜を見つめる眼差しは真剣そのものです。
大きな白菜や、ちょっと珍しい金柑も。
畑に移動して、「なばな」の収穫も行いました。畑には新鮮ななばながたくさん!
竹本さんに教えていただき、花の下15~20cmのところを折って、かごに入れていきます。
吉野の気候は野菜作りに適していて、自然の甘みがしっかり感じられる、おいしい野菜がたくさん採れます。また、山には野生の鹿も生息し、感謝してその命をいただきます。
吉野の日本酒「八咫烏(やたがらす)」蔵元
次に向かったのは、吉野が誇るお酒、「やたがらす」の蔵元直売所です。
「やたがらす」とは日本の神話にでてくる、3本足の大きなからす。神武天皇が吉野の山中で迷ったときに、天照大神(あまてらすおおみかみ)がやたがらすを遣わせ、神武天皇を導いたと言われています。成功に導くという意味で、サッカーの日本代表エンブレムにもやたがらすが使われています。
そんな「やたがらす」の名を冠した吉野町の名酒。日本酒ファンの間では「なかなか手に入らない、まぼろしのお酒」という人もいます。
リキュールの種類も多いこと!
「お酒として飲むのはもちろん、お料理やスイーツに使用しても美味しそう!」と、旅人料理人のお二人。は「栗のリキュールはバニラアイスにさっとかけても美味しいんですよ」という販売員さんのアドバイスも試してみたくなります。
その他にも、栗やほうじ茶といった、珍しい商品も扱っておられました。
しかし、今回のお目当はお酒ではなく酒粕!
いつもすぐ完売してしまうという、大人気の酒粕を特別に分けていただきました。
交流会が待ちきれない!吉野の食材をふんだんに使ったメニューとは
早速調理に取り掛かります!野菜など素材の味をひとつひとつ確かめて、その素材にあった調理や味付けを心がけているという旅人料理人のお二人。
鹿肉のローストに使用されたジビエは、地元吉野の鹿のモモ肉を使用しています。
畑で収穫したなばなもこのとおり。下準備が整いました。
準備はまだまだ続きます!
交流会会場ゲストハウス 三奇楼
交流会の会場となったのは、吉野杉の香る「移住体験スペース・ゲストハウス 三奇楼」。
もともと料亭旅館だった場所を、「上市まちづくりの会リターンズ」が中心となって改装。移住体験スペース・ゲストハウスとして活用されています。
ゲストハウスとして吉野を訪れる方を迎えてくれるだけではなく、移住を考えている方にとって、吉野の暮らしを体験することができる貴重なスペースです。
また、三奇楼には蔵を改装した「蔵Bar」も。長年大切に使われてきた空間が、良い雰囲気をかもし出しています。
このBarは「チャレンジショップ」として使用されており、色々なショップがかわるがわるやってきます。時にはスペイン料理レストラン、時には写真の展示も見ながら一杯飲めるBarに。今回は、東京・高円寺で大人気の「旅人Bar」の出張営業です!
旅人Bar&交流会
旅人Barも準備完了。あとはみなさんの到着を待つばかりです。
今回交流会と旅人Barで提供したメニューはこちら。
・鹿のロースト~かぼすポン酢or粒マスタード~
・白菜とベーコンのカリカリサラダ
・白菜の塩昆布和え
・水菜の塩昆布和え
・ジビエの回鍋肉
・大和当帰のキャロットラペ
・野菜スティック~大和当帰マヨ・ふき味噌ディップ~
・なばなのカラシ和え
・なばなとホタルイカのカラシ酢味噌和え
・大和まなのおかか和え
・人参のオムレツ
・大和まなのオムレツ
・金柑の一口クリームチーズケーキ
・黄金カブの炊いたん
・赤大根の甘酢和え
・赤カブのピリ辛ごま和え
・ふき味噌の焼きおにぎり
・めはり寿司
・やたがらすの酒粕で作った粕汁
全19品と盛りだくさん!
お料理は吉野の食材尽くしで自然の恵みがたっぷり。吉野町で育ったお野菜やジビエを使った品々が並びます。
吉野町の方々にお集まりいただき、交流会スタートです!
丁寧に血抜きを行なったジビエは、「全然ケモノ臭くない!」「このジビエも地元のものなの!? 貴重なお肉を食べられて嬉しい。」と大好評。
「野菜スティック~大和当帰マヨ・ふき味噌ディップ~」やサラダも人気。竹本さんのお野菜が美味しいからこそ、味が引き立つ一品です。
「ディップももちろん美味しいんだけど、野菜が甘くて美味しいからそのままポリポリ食べられる!」「野菜ってこんなに美味しかったっけ? 吉野の野菜最高ですね!」と参加者の方を笑顔にしていました。
カウンターにもお料理がずらり!
ふわふわで大好評だったオムレツの秘密を質問したところ、食べていただくタイミングでベストな状態になるようにしているとのこと。熱々ふわふわを食べていただけるように、作ってすぐ提供したとのことでした。
フキ味噌のおにぎりを「からし菜」で巻いた「めはり寿司」は、お料理を提供した瞬間に歓声が上がった一品。
「フキ味噌が美味しい!」「もう一個食べたい!もう完売!?」と、名残惜しそうな声が上がっていました。
やたがらすの酒粕で作った特製の粕汁は、最後に提供したお料理にもかかわらずおかわり希望者が続出した逸品。
「お腹いっぱいって思ってたのに、美味しいから食べちゃった。」「粕汁って初めて食べた。人生初の粕汁がこんなに贅沢でいいのかな?(笑)」と嬉しいお声が!
場も温まり、みながすっかり打ち解けてきたころに、たくさんの公務員の皆様が旅人Barに合流してくださいました。お仕事お疲れさまです!
初めましての方も多い中、あっという間に打ち解けてこの笑顔。地域の方との交流に花を咲かせました。美味しいご飯とお酒があれば、親しくなるのに時間はかかりません。
イベントはみなさんの笑顔で幕を閉じました
普段の生活ではなかなか出会うことができない行政の方と住民の方。そして「ソトモノ(地元以外の皆様)」と地元の方をつなぐイベントは大盛況のうちに終了。
参加した公務員の方からは、
「公務員というとお堅いイメージがあると思います。勉強会も堅苦しくなりがち。でも、今回の勉強会やイベントは本当に楽しくて、時間があっという間でした! こういうイベントが増えたらいいなと思います」
「吉野に来て、こんなにも吉野の食を満喫できるとは思っていなかった。やっぱり土地の食べ物って美味しいね!」
との声を聞くことができました。それを耳にした地元の方は、「吉野の食べ物を褒めてもらえて嬉しい」「またぜひプライベートでも遊びにきてほしい」と思わず笑みが。
吉野はこれから桜の季節を迎え、一面ピンク色の絶景が広がります。
魅力いっぱいの吉野に、ぜひ足を運んでみてくださいね!
ライター:瀬戸 波音